一、 中国物流市場の対外開放の法的環境
2001年12月の中国WTO加盟以来、中国の立法機関と各級政府機関は、WTO加盟に適応するため、大量の法律法規を制定、改訂した。中国の現在の法律体系において、物流市場参入の法律の枠組み及び具体的法律の根拠には、以下の幾つかの面が考えられる。
(1) WTO関連協定の規定
WTO関連協定の中に物流に当たる項目について具体的な又は専門的な規定はないが、一致した諸協定の大部分において、物流は直接又は間接的な影響を受けている。
まず、貨物貿易に関する幾つかのマルチ協定がある。貨物貿易は、物流の基礎であり、貨物貿易の存在があって初めて、その上に貿易貨物の流れが考えられるのである。WTOの貨物貿易に対する規定は、間接的に物流の運営に影響を与え、またそれを規範化するものであり、その役割は非常に大きい。『アンチダンピング協定』、『補助金とアンチダンピング協定』、『セーフガード措置協定』、『原産地規則協定』などは、物流市場の割り当て金に対し間接的な影響を与えているが、物流業務の展開に対する直接的影響は明らかではない。『農産物協定』と『紡織品及び服装協定』は、農産物及び紡織品の物流業務をおこなう物流業者にとっては大きな影響があるが、その影響は市場割り当て金に限られる。『動植物衛生検疫措置実施協定』、『貿易の技術障壁に関する協定』、『税関評価に関する協定』、『船積み前検査に関する協定』及び『輸出入許可手続きに関する協定』は、物流運営に直接的な影響を持つ。これらの協定が規定する内容は、一般的に物流段階において発生する。一部の協定のプロジェクト、例えば検査サービスなどは、自身の必要から又は物流発展の傾向から物流提供者が完成するものである。物流提供業者が、こうした協定に対し理解がなければ、物流実務の過程において、WTO議定書を武器として利用し、不必要な法的妨害を防ぐ又は克服することはできないのである。
次に、『貿易に関する投資措置協定』の規定がある。この協定は、外資企業の内国商業に存在する形態、外資に対する内国の権利義務を規定している。この協定は、物流市場の参入にも適用されることは明らかである。現在、この協定が外資物流企業の参入に対して、指導的役割を持っている。
次に『サービスの貿易に関する一般協定』の関係規定がある。当該協定によれば、サービス貿易の定義とは、サービスを提供することである。(a)いずれかの加盟国の領域から他の加盟国の領域への提供、(b)いずれかの加盟国の領域から他の加盟国のサービス消費者への提供、(c)
いずれかの加盟国のサービス提供者により他方の加盟国領域の商業拠点を通じて行われるもの、(d) いずれかの加盟国内のサービス提供者により他の加盟国の自然人の商業拠点を通じて行われるもの。物流がこの定義の中の「サービス」の範囲に属することは明らかである。WTO加盟国は協定の規定にもとづき、物流提供業者に国内市場を開放する義務を有する。当該協定は、一般責任と紀律面において、最恵国待遇、透明度、経済一体化、政府買い上げ、市場参入、内国民待遇などを徐々に自由化する内容を規定しているが、これは中国政府と物流企業にとって相当に重い義務である。ただし、当該協定はまた、セーフガード措置、一般的例外、安全保障のための例外などの条項を規定しており、中国にとっての重い負担であるWTO義務にとってバランスを保つ役割をはたしている。物流業界を例にとると、外資物流サービスの参入は、国内物流業界の発展にとって実質的な脅威だが、企業は、政府に対し法定手続きを通じて(WTO体制の下で)これらの条項の発動により、国内物流企業に対し保護装置をとるよう求めることができる。しかし国のイメージと信用を考慮するならば、やむを得ない場合を除いては、中国政府はこれらの措置をとることはないと、筆者は考える。
最後に、輸送業界の具体的協定がある。『サービス貿易に関する一般協定』内の『航空輸送サービスに関する付属文書』では、3項目の措置を適用している。(a)飛行機の修理と保守サービス、(b)航空輸送サービスの販売と営業、(c)コンピュータ予約システムサービス。国際物流提供者は、当該協定に基づき航空輸送を利用して、その供給チェーンを完備することができ、また航空輸送のコンピュータ予約データを利用して、市場分析と運用を行い、貨物に対しコントロールを行うことができる。中国は、海運サービスに係わる交渉においても、国際海上輸送、補助サービス及び港湾施設の進入と利用などについて、制限付き承諾を出している。そのうち、「国際海上輸送」とは、異なる国の港湾間で行われる旅客貨物輸送を指し、「補助サービス」とは、貨物の積み卸し、積み置き、保管、船倉搬入、曳航協力、バースでの運搬、貨物輸送代理、通関サービス、コンテナ置き場及び倉庫サービスが含まれる。
二、中国のWTO議定書での物流関連業界開放に関する承諾
中国のWTO加盟文書である『中華人民共和国加盟議定書』(以下『議定書』という)の中で、物流関連業界の開放について原則的な規定を出し、かつ付属文書9『中華人民共和国のサービス貿易に関する具体的承諾表第二条最恵国免除リスト』では、関連業界の市場参入手順、開放のタイムテーブルなどを詳細に記載している。
まずは『議定書』第5条に規定する関係貿易権の開放である。
中国は段階的に貿易権の獲得及びその範囲の開放を承諾している。3年以内に中国のあらゆる企業は、中国の全ての関税領土内において、付属文書2Aに記載されたものを除き、貨物の貿易に従事する権利を持たせることを承諾し、かつ外資企業に対して、直接最終ユーザーに接触することを含めた国内販売、許可販売、購買、輸送、代理販売又は使用において、内国民待遇を与えることを承諾した。この過渡期において、中国は段階的に外商投資企業の貿易権の範囲と獲得可能性を開放することとなった。即ち、加盟1年後には中国がマジョリティーを持つ中外合弁企業に完全な貿易権が与えられ、加盟2年後には、外資がマジョリティーを持つ中外合弁企業にも完全な貿易権が与えられる。中国は加盟3年以内に貿易権の審査認可制度を取り消す予定である。
次に、『議定書』において中国は『民用航空機協定』に加盟しないことを明確に表明した。当該議定書は、上記に紹介したようにその物流システムの航空輸送及び輸送機械に与える影響が非常に大きい。中国は、民用航空機購入時に、具体的に種類又は数量を指定するといった商業チャンスを含む如何なる補償規定又はその他の形式の産業補償を実施しない。
付属文書5Aでは、運送など国が奨励する部門の所得税率をさらに15%までに引き下げる。港、船着場、バースの建設に従事する中外合弁企業には15%の優遇所得税率を適用すべきであり、経営期間の15年を超える企業については、最初の5年間は所得税を免除し、5年目から10年目までの所得税の50%を免除すべきである。これらの規定は物流のインフラ施設の建設促進には大いに役立つが、国内の物流インフラ施設の投資者にとっては、巨大な投資圧力となる。
付属文書9は市場参入制限、内国民待遇制限、その他の承諾などの面から物流関連業界に対し規定を定めている。物流の付加価値サービスのうち包装サービスについては市場参入の面で、外国のサービス提供者による中国での合弁企業の設立を認め、中国の加盟後1年以内に、外資がマジョリティーを持つことを認め、加盟後3年以内には外国サービス提供者に100%外資の子会社の設立を認める。宅配サービスにおいては、現在の中国郵政部門の法による独占サービスを除き、WTO加盟時に外国のサービス提供者による合弁企業の設立を認めるが、外資は49%を超えてはならず、中国加盟後1年以内には外資がマジョリティーを持つことを認め、中国加盟後4年以内には外国のサービス提供者に100%外資の子会社の設立を認める。
付属文書9はさらに塩とタバコを除く代理販売サービスについても規定している。代理販売サービスには主にコミッション代理サービスと卸サービスが含まれる。中国WTO加盟後1年以内に、外国サービス提供者は合弁企業を設立し、すべての輸入商品のコミッション代理業務と卸業務に従事することができるようになるが、ただし、図書、新聞、雑誌、薬品、農薬及び農業フイルム等一部の製品は例外とする。中国加盟後2年以内に、外資がマジョリティーを持つことを認め、地域又は数量制限を撤廃し、中国加盟後3年以内に制限を撤廃することとしている。外商投資企業が中国で自ら生産した製品(市場参入又は部門又は小部門欄に記載された製品を含む)の代理販売、並びにアフターサービスを含む付属文書2で定義するすべての関連付属サービスの提供を認める。
小売業における小売サービス(タバコは含まない)の承諾。WTO加盟後に、経済特別区5都市及び北京、上海、天津、広州、大連、青島、鄭州、武漢において合弁小売企業の設立を認め、北京及び上海には4社の合弁小売企業の設立、その他の地方には多くとも2社の合弁企業の設立を認める。北京の2社の合弁企業は市内において支店を開設することができる。2002年1月までに地域、数量、外資の株式保有率に関する全ての制限を撤廃する。支店を30社以上持っているチェーン店については、依然として外資には持分権50%以下の合弁企業の経営しか認めない。中国WTO加盟後3年以内に特許経営と固定場所のない卸売り又は小売サービスにおける外資の商業存在に関する制限を撤廃する。
運送サービスのうち海上運送サービスの中の国際運送(貨物運送と旅客運送を含むが沿海運送と内航運送サービスは含まない)における外資の進出について、「外国のサービス提供者による合弁の船舶運送会社の設立は認めるが、外資は合弁企業の登録資本の49%を超えてはならず、合弁企業の董事長と総経理は中国側が任命すべきである。」と規定している。
補助サービス(海上運送の貨物管理サービスと海上運送の通関サービスを含む)、コンテナ置き場サービスは合弁企業の形式に限り、外資がマジョリティーを持つことを認める。海上運送の代理サービスは合弁企業の形式に限り、外資の持分比率は49%を超えてはならない。内航の貨物運送においては、外国の船舶に開放する港のみ国際運送を認める。
航空機の修理と保守サービスにおいて、外国サービス提供者が中国で航空機の修理保守をおこなう合弁企業を設立することを認めるが、中国側が合弁企業のマジョリティーを持ち、又は支配的な立場でなければならない。合弁企業設立の営業許可は営業需要に関するテストを行う必要がある。
外資の鉄道貨物運送及び道路トラックと自動車貨物運送サービス分野については、合弁企業の形式に限り、外資の持分比率は49%を超えてはならない。鉄道運送について、中国加盟後3年以内に、外資にマジョリティーを持つことを認め、中国加盟後6年以内に、100%外資による子会社の設立を認める。道路運送については、中国加盟後1年以内に、外資がマジョリティーを持つことを認め、中国加盟後3年以内に、100%外資による子会社の設立を認める。
すべての運送形式の補助サービスのうち、倉庫サービスについては、加盟時より合弁企業の形式に限り、外資の持分比率は49%を超えてはならない。中国加盟後の1年内に、外資がマジョリティーを持つことを認め、中国加盟後3年以内に制限を撤廃し、100%外資による子会社の設立を認める。
貨物運送の代理サービスにおいては、加盟時には、少なくとも連続して3年間の経験を持つ外国貨物運送代理業者が中国で貨物運送代理合弁企業を設立することを認めるが、外資の持分比率は50%を超えてはならない。中国加盟後1年以内に、外資がマジョリティーを持つことを認め、中国加盟後4年以内に100%外資による子会社の設立を認める。合弁企業の最低登録資本は100万ドルを下回らず、経営期間は20年を超えない。中国で経営を開始して1年後に、合弁双方の登録資本とも入金されたときに出先機関を設立することができる。外国の貨物運送代理業者は、その1番目の合弁企業が経営を開始して5年後に、2番目の合弁企業を設立することができる。中国WTO加盟後2年以内にこの要求は2年まで引き下げられる。
三、現在の中国国内法の物流市場参入に関する法律規定
WTO加盟の承諾に基づき、中国国務院が制定し、2002年04月01日から実施している「外商投資方向指導規定」と「外商投資産業指導目録」(以下「産業目録」と略称)においても、物流サービス市場の参入について関連の規定を出している。
「産業目録」により、中国対外経済貿易合作部(以下「外経貿部」と略称)及び国務院の関係部門、委員会がそれぞれWTO加盟の承諾と「産業目録」に基づき物流業に係わる各専門分野の部門、委員会の詳細規定、例えば「外商投資国際貨物運送代理企業審査認可規定」、「外商投資道路運送業管理規定」、「外商投資鉄道貨物運送業の審査認可と管理規定」、「外商独資船舶業務会社審査認可管理暫定弁法」、「民用航空業への外国投資に係る政策に関する通知」等を制定した。
上記法律文書の枠組の下で外経貿部は、まず北京市、上海市、天津市、重慶市、江蘇省、浙江省、広東省及び深?市(以下「試験省市」と略称)において物流市場を開放し、外資による物流市場の進出のモデル地区とすることを決定した。2002年06月20日外経貿部は「外商投資物流企業の設立の試験的な展開に係る問題に関する通知」(以下「試験通知」と略称)を通達した。「試験通知」には下記のように規定されている。
各試験省市においては試験的に外商投資物流企業を設立することができる。設立する物流企業は中外合弁、中外合作に限られる。通知によれば、設立された外商投資企業は下記の業務を営むことができる。
国際流通物流業務:輸出入業務及びその関連サービス。これには、貨物の輸入、輸出業務の自営又は代理、委託を受け輸出加工企業に輸出入の代理業務を提供すること及び海上運送、航空運送、陸上運送による輸出入貨物の国際貨物運送の代理業務の提供が含まれる。
第三者物流業務:普通貨物の道路運送、貯蔵、積み下ろし、加工、包装、配達及び関連情報の処理サービスと関連コンサルタント業務、国内貨物の運送代理業務、コンピュータによる物流業務のネット管理と運営。
上記業務を経営する外商投資企業の登録資本は500万ドルを下回ってはならず、国際流通物流業務に従事する場合には、外資の持分比率は50%を超えてはならない。
「試験通知」は初めて物流を総合、系統的な産業として定義し、かつ現在の外商投資物流業の経営可能な範囲を明確した。これが当面外商投資物流業の主な法的根拠である。
中国の当面の法律体系に比べ、欧米等先進国の物流法規体系は相当に完備されていると筆者には思われる。かかる法律体系は物流業の円滑、健全な発展に良好な法的環境をつくり、そして物流実践の発展にも有利となる法律の制定のための基礎をうち立てている。このようにこれらの国の法的環境と業界の経営実践の間には、相互連動関係が存在している。又は、これらの国の物流企業は国際市場の開拓に対する良好な法的環境をつくるため、政府の力を通じて国際物流に関する統一立法の推進を終始図ろうとしてきた。現在、中国政府が公布した上記の一連の行政法規、部・委員会の規定はいずれも中国WTO加盟の承諾の上に、関連産業の市場参入を具体的に規範する詳細規定であり、かかる規定はそのいずれもが中国政府のWTO加盟の承諾履行に伴い、然るべく修正し変更されるであろう。それと同時に欧米先進国の立法と実務経験を参考として、物流市場の完全な開放前に、より完全で容易に管理できる法律法規が制定されると思われる。中国物流市場への投資を計画している外国企業は、かかる法律法規の制定と修正にもっと関心を持つべきである。中国政府は遅くとも、2005年12月11日までにWTO加盟承諾の中の物流サービスに関係する各分野を全面的に開放し、そのときには、外国投資者は国際物流分野にしても、国内第三者物流分野にしても、状況に応じて中外合弁、中外合作又は外商独資の形式により、関連のサービス企業を投資設立するであろうことは容易に予想できる。
四、当面の外資による中国物流市場進出の実践
現在、多くの実力のある多国籍企業が中国市場における競争に参加し、市場シェアを獲得するため、中国の物流市場に進出し始めている。わずか数ヶ月の間に多数の専門の物流企業が現れ始めている。
2002年後半に自動車物流合弁企業が上海に設立され、上海自動車集団の上海自動車工業販売総公司とオランダのTNTが合弁で設立した安吉天地自動車物流有限公司が正式に開業した。続いて香港招商局物流集団有限公司煙台分公司が煙台の海通工業団地に設立され、煙台物流業に進出する最初の香港企業となった。商船三井が蘇州に拠点を作り、傘下の上海龍飛国際物流有限公司を通じて、蘇州に新しい出先機関を設置した。大衆交通が日本の佐川と提携し、大衆交通が51%のマジョリティーを持つ上海大衆佐川急便が交通部の認可を受けてこのほど正式に設立され、間もなく「宅急便」の宅配業務をスタートする。そのほか、デンマークのMerchandise
logistics Co.、DANZAS、President Lines、イギリスのEXEL社とINCHCAPE等の会社が中国の物流市場で積極的に活動している。これまでの既存顧客である多国籍企業の中国市場進出を利用して物流サービスを提供する一方で、中国市場で成長しつつある専業化物流サービスの需要に対してサービスを提供している。例えば、UPS、TNT等国際大型物流企業が相次いで中国の宅配市場に進出している。
これらの物流企業の発展背景から分かるように、各国の物流企業には異なる特徴があり、かかる特徴が当該国の物流企業の中国市場における進入に差をつけている。米国と日本の例にとると、米国の全国物流体系の各構成部分はいずれも世界のトップの位置にあり、その中でも配送センター、宅配、企業物流等は特にその傾向が強い。米国物流のモデルは「一体化された物流管理システム」であり、全体の利益に重点を置き、部門別の管理体制を打破し、全体的な統一計画管理をおこなう方式である。米国の物流企業様式は色々あるが、代表的には以下のものがあげられる。(1)配送センター:米国のチェーン店の配送センターには、主には卸型、小売型と倉庫型の3種類がある。その代表的な企業として広く知られているのはカリフォルニア州食品の配送、ウォルマート社の配送である。ウォルマートはすでに中国に進出しており、その強力な物流力は中国のチェーンスーパーマーケットの物流に革命をもたらすことになるであろう。(2)異地間宅配サービス。UPSが世界運送と宅配業の最高水準を代表している。当該会社は進んだ物流とコンピュータ技術を駆使して、世界各地をカバーする発送センターネットワークを構築し、詳細な計画と連携作業を推進している。経営理念を運営の効率と信頼性から顧客志向に転換し、一人一人の顧客の需要を第1に考えている。UPSの管理運営モデルは中国の宅配サービスの伝統モデルに影響を与えている。(3)e−ビジネス企業物流のAmazon社。Amazonは、自社大型倉庫センターを持っているが、「ドア・ツー・ドア」の配送においては、一貫して外注に依頼しており、力を生産と経営に集中している。日本の物流も同様にすさまじい発展を見せている。異地間宅配業のヤマト運輸、佐川急便等企業の独特な「宅急便」サービスは中国の物流市場において巨大な潜在競争力を秘めている。小売業(コンビニ)を経営している伊藤忠、製造業の花王、第三者物流の菱食株式会社も物流業における優れたモデルであり、これら企業の代理販売と物流統合で蓄積した成功経験は中国物流市場の促進に役立つに違いない。
上記外国企業は中国の巨大な物流需要市場に注目し、中国投資の戦略を積極的に模索している。如何にして現行の法律規定に従いつつ最も合理的な方法で他に先んじて中国市場を打開することができるかが、これら企業にとって検討すべき課題である。従来、外資はサービス契約の締結又は代理の方法で中国国内の企業(主に多国籍企業)に関連サービスを提供することにより中国の物流市場へ進出していた。中国のWTO加盟に伴い、物流業の制限が3〜4年後には全面的に解除されれば、外国会社による中国市場への投資テンポは明らかに速まるであろう。これら企業の多くが、各地方で一社ずつ自社の事務所、支社を設立して、ネットワーク構築を押し進めるという方法をやめて、合弁、吸収合併の方式を選んでいる理由は、短時間で迅速に中国物流市場において発展するという目的があるからである。
合弁、吸収合併の相手選択において、従来、外国の会社は中国対外貿易運輸公司等の中国国内の大型物流企業に目標を定めて、それらの企業と合弁、合作して会社を設立してきた。しかし、それらの会社自身が中国国内の市場において高いシェアを有しているため、設立した合弁企業は国内市場でこれらの国内企業と競争しにくい。そのため、現在、外資物流企業は国内物流の需要側との提携に目を向けている。例えば大型チェーンのスーパーマーケット等と合弁で物流企業を設立し、中国側株主の膨大な物流業務を利用して合弁企業を迅速に発展させ、将来中国の物流市場が完全に開放された時点で、持分の買戻しにより合弁企業を外商独資企業に変更することにより、市場占有の目的を達成しようとしているのである。
五、外国投資者の中国物流市場参入に関する展望
中国物流市場への外国投資はスタートしたばかりで、当面はまだ法律、政策上一部制約を受けるが、中国政府によるWTO加盟承諾のさらなる履行に伴い、中国物流市場の全面的な開放は単に時間の問題となった。
現在、中国物流のインフラ施設と装備の発展は一定の成果を見せている。交通運送方面では、中国では鉄道運送、道路運送、内航運送、航空運送及びパイプ運送という五つの部分から構成された総合運送システムがすでに構築され、運送路線と駅舎の建設及び輸送車両と装備においても大きな発展を遂げた。倉庫施設面でも年間投資規模は急速な成長を続けている。1990年の中国倉庫業の基本インフラ投資規模はわずか4.2億元だったが、1998年には65.8億元となり、1990年に比べ14倍以上増加した。情報通信方面では、現在中国ではすでに電信ネットワーク幹線光ケーブルを30万キロ有し、かつ光ケーブルをメインとし、デジタルマイクロウエーブと衛星通信を補助的な手段とする大容量のデジタル幹線転送ネットワークが形成されている。4大主幹ネットワークは全国の市以上の都市と90%の県級市及び大部分の町までをカバーしており、かつ世界主要国際情報ネットワークに接続している。これにより、EDI、ERP、MRP、GPS等物流情報の交換、管理とコントロールをめぐる技術の応用が可能となった。包装と運搬施設方面では、近代的な包装技術と機械化、自動化貨物運搬技術がすでに幅広く利用されている。
2002年から中国の専業物流市場は本格的に発展し始め、家電、自動車、IT、化学工業、小売、食品、消耗品等の分野の物流需要が出始めると同時に、物流産業の発展は各級の政府の重視を受け、一部の地方がその既存の条件を利用して物流業の外資融資、WTO加盟に先んじて試行政策を制定している。例えば、上海では物流の発展方針を制定し、国際物流業への開放を速めている。特に第三者の国際物流企業の導入と発展の面では、上海は一歩先に進んでおり、世界的に有名な第三者物流企業の管理経験を積極的に導入している。現在上海の外高橋保税区には国際物流センターの建設が進んでおり、国家外経貿委、税関総局の特別認可の下で、倉庫、分類、配送、短距離道路輸送、宅配等の業界においてすでに外商独資の設立を認め始めている。
現在、外高橋保税区には、すでに60以上の国と地区からの4800件以上の投資プロジェクトがあり、同時に国際中継貿易、輸出入貿易、輸出加工貿易等の業務に従事する5000社以上の中外の企業が集中している。かかる企業は効率よく運営する貨物輸送の物流サービスシステムを導入し、並びに外高橋の現代物流に膨大なユーザーを提供している。外高橋には倉庫分類企業が600社以上もあり、倉庫面積は80万平米を超えている。その他、外高橋保税区には3000社以上の対外貿易会社と物流企業があり、貨物輸送の定期船が全世界の126の国と地区に通っている。敷地1.2万平方キロメートルの新設の近代国際物流団地も開業した。
外高橋は、近い将来20社の国際的に著名な船会社、50社の大型物流企業、200社の多国籍会社の分類センターを受け入れることをすでに計画済みで、年間国際貿易量は2000トン、400億ドルの年間輸出貨物を達成する見込みで、アジア、太平洋地区での強力な競争力を有する調達・配送・中継センターとなる予定である。今までの実践で裏付けられているように、外高橋保税区ではその他の地区と異なる特別な政策を実施していることにより、世界的に著名な物流企業が中国物流市場を「奪い取る」ための上陸地とされている。外高橋保税区が近いうちに必ず中国物流市場の全面的な開放の先駆けとなることは確かであろう。
中国の物流市場は巨大な潜在力を持ち、中国物流市場への外国投資の法的環境もさらに完備されつつある中で、経済活動における中国政府の観念も徐々に変わり始め、中国物流市場の管理も現在の縦割り、多部門、複雑な手続きの管理体制を打破し、開放的で、柔軟性のあるシステマチックな物流大市場が形成されるであろうことは明らかである。従って、中国物流市場への外国投資の未来は、非常に明るいと思われる。